蜂の子の基礎知識

蜂の子・ザザムシ・イナゴは貴重なタンパク質源だった

中部地方で貴重なタンパク質源として重宝されてきたのが昆虫です。
古くから食用にされてきた昆虫には蜂の子やザザムシ、イナゴなどがあります。

海から遠い山国では、良質なタンパク質源である魚が手に入りづらく、魚はお正月やお祭りなどの時にしか出されることのない貴重なご馳走だったといわれています。
そのため山が多い中部地方の一部地域ではタンパク質を補う重要な食べ物として、昆虫が古くから食用に利用されてきました。

食用として珍重されてきた「蜂の子」

蜂の子は蜂の巣から採集する蜂の幼虫のことで、クロスズメバチやアシナガバチ、ミツバチなどが食用にされてきました。
特に目につくところに生息し、巣の採取にあまり危険がないヘボやスガラなどと呼ばれる地蜂・クロスズメバチの蜂の子は古くから食用の昆虫として珍重されてきました。

クロスズメバチは家で飼育することも

クロスズメバチはモグラやネズミがあけた道や空洞を根城にして、巣を地中に作ります。
クロスズメバチの幼虫のエサには肉や樹液が必要なため、平地よりもエサが多い山地に巣をつくる習性があり、この巣は秋の最盛期にもっとも大きくなります。

そのため蜂の子は巣がもっとも大きくなる秋に採集されることが多く、秋の風物詩であり、秋を感じられる郷土料理の食材として珍重されてきました。

蜂の子は野山から採集したものを食べることもあれば、家でクロスズメバチを飼育して巣を大きくしてから食べることもあるそうです。

蜂の子の味は? 調理方法は?

クロスズメバチの蜂の子は甘さと香ばしさがあり、スズメバチの中では最もおいしいといわれています。
調理は砂糖と醤油で煮つけるか、炒るか、混ぜご飯にして「蜂の子ご飯」として食べられています。

蜂の子ご飯は蜂の子の煮つけ、あるいは炒った蜂の子をご飯に混ぜた料理で、現在でも中部地方で秋を感じさせる郷土料理として根付いています。

中部地方の高級珍味「ザザムシ」

ザザムシは古くから食用に利用されてきた水生の昆虫で、カワゲラやトビケラなどの幼虫です。
主に佃煮や揚げ物などにして食べられています。

食用にする水生昆虫は春に羽化するものが多いため、ザザムシ漁は羽化する直前の幼虫を狙って12月から2月にかけて行われます。

越冬中の幼虫は餌をほとんど食べないため臭みが少なく、脂肪などの栄養を十分に蓄えていて大変美味だといわれています。
蜂の子と同様、ザザムシは貴重なタンパク質源として古くから重宝されてきた昆虫で、ザザムシの佃煮は今でも高級珍味として高値で取引されています。

ザザムシが一部地域にしか出回らない理由

ザザムシは高値で取引されるため、以前は乱獲によって絶滅の危機に瀕したこともあったようです。
ただしザザムシ漁がおこなわれる天竜川では、半世紀以上前から漁業協同組合が発行する鑑札を持った人だけが冬季のみ採集できることになっており、現在ではザザムシは絶滅の危機を逃れて数も回復しています。

全国で食べられてきた「イナゴ」

イナゴは江戸時代から食べられてきた昆虫で、四季を通じて佃煮がスーパーに並ぶ地域もあり、現在でも広く愛され食べられている昆虫です。
蜂の子やザザムシは中部地方で比較的食べられているのに対し、イナゴは地域を問わず、全国で食用に加工されています。

イナゴにはタンパク質25~26%程度含まれており、またカルシウムも豊富なことから戦時中など食料が不足していた時代に重宝されてきました。
イナゴは串にさして炭火で焼いて食べたり、佃煮にして食べたりします。

昆虫はタンパク質だけでなく脂肪、ビタミンや食物繊維、ミネラルでは鉄分や亜鉛が豊富で、健康的な食用資源であり、かつ少ない資源で大きく育てられるため、飢餓撲滅の達成を目的に設立された国連食糧農業機関(FAO)も高く評価しています。

その見た目から食べることに抵抗を持つ人も多いですが、「食料」として昆虫の価値が見直されるようになれば、いずれ一般的な食べ物として昆虫が定着する日がくるかもしれません。